外でくぐもった話し声が聞こえる。
devilの声と医者の声だろうか。
しばらくしてdevilが病室?に脚を踏み入れる。
「とんだ大怪我だな」
わたしは微妙に口角をあげる。
「わたしドジなんで、階段から落ちました」
「ははっ…どんな落ち方だよ」
到底信じていない、というような表情でdevilは空笑いをする。
ーっ…
滅多に見せない笑みに、体の奥がちりっとする。
細まった瞳はどこか優しげに見えてしまって…自分はきっとおかしい。
熱にうなされているんだ、きっと。
「今日はお世話になりました…帰ります」
体を起こそうとすると、devilは呆れたように流し目を向けた。
「お前医者のいったこと聞いたか?あ・ん・せ・いにしてろって。」
「でも…家に…。」
「お前の親には俺から言っとく」
いや、そういう問題じゃなくて…
「病人返したら母親も怒るだろ。安静にしてればいいんだよ。ちゃんと連絡入れるから」
話が通じない。
わたしは小さく息を吸う。
目を閉じると、あの人の背中が見えるから閉じられない。
「どうしてここまでしてくれるんですか…?」
痛み止めが効いている。ちゃんと喋れるようになった。
devilはもたれかかっていたドアから体を持ち上げると、ゆっくりと歩み寄ってきた。
そしてベッド脇に立つと、わたしを涼しげな表情で見下ろした、
「やってはいけない理由があるか」
「…え…?」
devilは尚も静かに言う、
「人を助けて何が悪い」
今までのdevilの印象とはかけ離れたその表情に、心臓が小さく跳ねた。
不覚にも、一瞬だけ、惹かれてしまった。



