なにそれ。
医師が体温計を取り出す。
久しぶりのそれを見て、少しだけ体がこわばる。
治療なんて…いつぶりだろうか。
ちらりと横を見れば、devilは動き出すそぶりをまったく見せない。
「あ?」
しまいには逆ギレときた。
「ちょ、お前さあ…仮にも女の子なんだから、はあ…」
医師が呆れたようにdevilを見据える。
「あ?んだよ。」
「治療するから。」
「だから?」
こいつはバカなのか。
それに、見られたくない。
こんな自分、見られたくない。
「だりい…」
そう言いながらもdevilはおとなしく立ち上がって部屋を出て行く。
「治療終わったら適当に連絡入れろ。」
どこまでも雑だ。
「何があったの?」
医師が視線をわたしに向ける。
「……。」
わたしは答えない。
「喧嘩?」
「…階段、か…ら、落ち…ました。」
苦し紛れの言い訳。
医師は小さく悲しそうに口角をあげる。
「そうだったんだね。」
そのあとは何を聞いてくるわけでもなく、体の怪我を調べられ、麻酔を打たれ、何針か縫われたような気がする。
とにかく体の痛みが強すぎて、治療の痛みが感じられなかったのが現状。
だけどしばらくすれば、強い麻酔が体に回ってきて、やっと全てが鈍い痛みに変わっていった。



