それだけは…絶対に…ダメ。
「あ?」
「だ…めっ…。」
体が火照って熱い。
devilは何も答えない。
「お…ろし…て。」
「あ?」
「医者…呼ぶ…な、ら…おろ、し、て。」
バカなことを言ってるってわかってた。
devilならなんでもやりかねない。
このまま道に放る投げ出されたら、きっとわたしはどうすることもできない。
それでも、医者だけはダメだった。
ダメ。
ダメ。
devilが答えるまで、なんとか意識を保つ。
震える腕で車の戸の鍵を開けようとするけれど、指先が思うように動かない。
悔しくてバン!とドアを叩く。
devilはそんなわたしを冷ややかな視線で見つめている。
「……バカだな。」
「……っ…。」
「お前みてえなやつ、一番嫌い。」
別に傷つかなかった。
「だ…し、て。」
「俺は医者を呼ぶっつってんだよ。」
「だ…め…。」
「お前に拒否権ねえだろ。」
「お…ろ、」
「うっせえんだよ。」
「…。」
「俺専属医師だ。他には行かねえよ。」
そう聞いた時、フッと体の力が抜けた。
専属医師…ということは…devilしか診ない…
全体重をぐったりとdevilの膝にかけて、わたしはまた浅い眠りに吸い込まれていった。



