「はぁ…はぁ…」


何かに引っ張られるようにして瞼を開ければ、全身に鋭い痛みが走って身をよじる。


シャツがぐっしょりと濡れている。


「…起きたか。」


低く掠れた声が聞こえてわたしは焦点を合わす。


目を細めれば、頭上に息をのむほど整った顔が見えて、わたしは思わず仰け反りかえりそうになった。


「動くんじゃねえバカが。」


冷たい何かを額に押し付けられる。


「何時間あそこにいた。」


有無を言わせぬように威圧的に問いかけてくるdevil。


「夜あんな場所にいたら、冷えて熱出るに決まってんだろ。」


額に汗で張り付いた髪をゆっくりとかき分ける彼の手は驚くほど冷たい。


手が伸びてきた瞬間、逃げる時間はあったし、よけることもできた。


全身が痺れたように凍ったけれど、熱ぼったい体にひんやりとあたるその手をどけようと思わなかったのは、誰かの静かな眼差しに彼が重なっていたからだ。


ゆっくりと頭を動かせば、後頭部の下にごつごつとした温かいものを感じる。


どうやらわたしは彼に膝枕されているようだ…は???


っ、いや、は???


心臓が痛い。だけど、体が直立して動かなくなることはなかった。



パニクって頭が真っ白になった自分を落ち着かせようと周りを見れば外の景色が移り変わっている。


車の座席にいるらしい。


わたしは何を考えているのかわからないdevilの顔を盗み見る。


ーどうしてここまでわたしのためにしてくれるの…?