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うつらうつらしながら夢をさまよい歩いているわたしの先には闇しか続かない。

鈍い痛みが時折体を刺激するけれど、それよりも、どこからともなく漂ってくる爽やかな青リンゴの香りに惹かれて歩いている。


暗闇の奥に青白い光が見える。


『…ねえ。』


わたしのくぐもった声がどこか遠くから聞こえてくるけれど、その光の中で亡霊みたいにゆらゆらと揺れている人は振り返ることはない。


『…待って。』


そう声をかける自分を客観的に見ていた。


甘い香りが一段と強くなる。


わたしは糸に引かれるように真っ暗な世界を滑って行く。


『大好き。』


そう言って口角を上げて、優しく微笑む。


わたしの言葉は宙に浮いたまま動かない。


その人が振り返る。


返事の代わりに、伸びてきた手を避けられないまま、頰に乾いた痛みを感じた。


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