ツヤツヤの革の座席でもじもじしながらわたしは尋ねる、


「あの…本当に…わたしはなぜここに…。」


助けるって言っても、わざわざここまで連れてくるって、おかしいよね?


隣の運転手席でハンドルを握る柊さんはニヤッと口角を上げる、


「凛ちゃんが可愛いから連れ攫いたくなっちゃった。」

「冗談はやめてくださいよ、もう。」


裏があるのだろうなあと思いながらも適当にあしらう。

私、こういうのは結構得意技なんだ。


「まあ、あの現場を見たってのも確かにあるけどね。そのまま逃したらポリス直行かもしれなかったし。」

「で、すよね…。」


まあ、やっぱりそれもそうか…


『じゃあなんで返してくれてるんですか?』


なんてもちろん聞けない。それで思い止まられたら終わりだ。


こんな豪邸に少女一人とらわれてても、きっと誰も気づかない。


誰も…。



「ごめん、ちょっと目隠ししてもらえる?」

「はい?」

「住所ばれたくないんだよねえ。」


やっぱりヤバい奴らだ…


恐る恐る渡された目隠しをすると、


「わあ、なんかやばいねその格好、うん。」


なんて言われていよいよ体がこわばる。


いつまで目隠しでいればいいのかわからないわたしは、緊張しっぱなしだ。


わたしがガチゴチに凍ってる間に柊さんは呑気に喋っている。


「あー、もうとっていいよ。」


そう言われてやっと許可が下りたわたしが目隠しを外すと、あまりの眩しさに目を瞬いた。


「え…」


窓の外を覗くと自分の家が目の前にある。


「ここだよね?調べちゃった。」


けろっと笑う柊さんに震えが止まらない。


いつの間に…どうやって…


そんなのは聞いたって仕方のないことだ。