「…家へ、帰りたいです。」

やっとの思いで喉の奥から絞り出した声。

だけど中島さんの時にみたいに震えないし、恐怖で心臓を吐きそうにもならない。

なんでだろう。安心しちゃう自分がどこかにいる。それはこの悪魔を信用しているから?


devilは何も言わずにじっとわたしを見ている。


「無理だ。」

「…え?」


思わず出てしまった言葉を後悔しながらも、わたしは一生懸命口角を上げる。


「帰りたいです。」

「無理だ。」

「家に帰りたいんですけど。」

「無理だ。」


『無理だ』、一点張りの彼は語学力がないのだろうか。

イライラがこみ上げてきて、もうどうしようもできない。

なんでこの人といるとこんなに腹がたつの?!


「だから!家へ、」

「死ぬぞ。」

「へ?」

「今出たら、お前、死ぬぞ。」

「何言ってー」

「家、囲まれてるから。」

「は、はあ?!」


依然と涼しい顔をしてわたしを見る彼は、わたしとの会話に飽きたのかスマホを取り出している。


「何してー」

「黙れ。」


はあ??????!!!!


黙れだあ!???!?


やばい…落ち着け。1、2、3…

そう、そう、笑顔。

大事。