Darkest White


昨日の記憶が一気に鮮明に蘇ってきて私は現実逃避をするかのように一緒に引き摺り下ろしてしまった布団を上からきつくかぶった。

夢だ、これは夢だ。

よし、一度目をつぶって起きたら、元の家に戻っている…はず。

そーっと布団をあげてその隙間から外の様子を伺ってみる。

だだっ広い白い部屋。

小さなガラスの丸テーブルの上に置かれた高級そうな瓶に生けてある名前も知らないような花々。

閉められたクリーム色のカーテンの奥から光が注ぎこんできている。

そして落ちた場所の横にあるのはこれまた大きすぎるキングベッド。


ん?き、キングベッド?!


「わあああ!?」


待て待て待てわたしは記憶を失っているのだろうか。

こんな情景記憶に残ってないぞ。

まあそれだったらむしろ都合が良い。

記憶がない=夢ということだ!!

よしよし。

うんうん、そしてカーペットが敷かれた床の先には、黒く尖った靴が…。

ん?

く、靴!?


「くくっ、起きた?」

!?!?!

「な、中島さんっ?」

跳ね起きたわたしを見てくすくすと笑う彼。

どうやら記憶は正常なようだ。

って、そんな場合じゃなくて!


白いカーペットの上に立つ彼は右手に鍵を握っていて、


「ごめんね、巻き込んじゃって。」


と目尻を下げた。


ま、巻き込んじゃってだと?!?


軽くないか???そ、そうだよ!わたし危うく銃撃戦で死んじゃうはずだ…

あれ?あの人は…

ていうかなんで中島さんが…っ


「驚きました…。」


だけどすべての怒りは一言に収められる。