「分かりました…お世話がせしました。遅くなる前に帰ります、失礼します。」

そう言って踵を返そうとすると、


「あ、ちょっと待って!」


鈴葉さんの綺麗な声が背中に届いて私は振り返った。

「あなた…帰ってる場所って家よね?」

「あ…えっと、その光の家です。」

「…待って…凛ちゃん、まだ天馬の家にいるの?」

それが、どうかしたのだろうか。

目つきの変わった鈴葉さんは私に近づいてきた。

まるで一歩一歩を慎重に踏んでいるかのようなその姿に、どこか焦りが感じられる。

「それって…いつから?」

言われてみれば、私はいつから光の元で暮らしていたのだろうか。

もう半年は過ぎている。

本当にあっという間だった。

「半年くらいです。」

「それって、嘘じゃないわね?」

どうしてここで私が嘘なんか…

鈴葉さんは何かを考えるそぶりを見せると、決心したかのように顔を上げた。


「分かった。着いてきて。」


鈴葉さんの真剣な眼差しに戸惑いながらも、私はこくっと頷いた。