「友美ちゃん、これ、」
宿題でわからないところを聞きに行けば、変なものでも見るような目でわたしを冷たく見つめる友達。
友情という凶器に振り回されたこの年。
二度と友達なんて作らないって決めたのも、きっとこの時期だったのだろう。
「凛ちゃんのお母さんがあまりにもうちの家に『頼りすぎだ』ってママ怒ってたよ?」
挑発するような友美ちゃんの言葉に、体が震えた。
幼稚園の頃から一緒だった仲。これからもずっとそれが続くんだって思ってた。
お母さんが忙しい時も、嫌な顔せずに優しく頭を撫でてくれたあのおばさんが…っ、唐揚げを作ってくれたおばさんが…わたしのお母さんに…怒ってる?
「それに、遠足で必要なエプロンだって、ママに作らせてるんだから。ちゃんと自分のお母さんに作ってもらいなよ。」
エプロン…?
「そ、そんなの知らなかった…」
「そりゃそうだよね。だって凛ちゃんのお母さん、行事の手伝い一回も来ないもんね。」
仕事でボロボロになっているお母さん。学校の行事に参加する時間なんてないし、すごく忙しそう。
「だってお母さんお仕事が…」
「パパから聞いたけど、最近凛ちゃんのお母さん金髪の男の人とよく一緒にいるらしいね。パパが『まともな仕事じゃない』って言ってた。」
金髪…?
笹原さんの髪の毛は普通の黒髪だ。
だったら一体…
「凛ちゃんって、かわいそうな子、だってね。」
友美ちゃんの勝ち誇ったようなその表情に、視界が暗転する気がした。
かわいそうな…子。
わたしって…かわいそうな子なの?



