「あ、クッキーもう一枚いる?」

まあ光のなんだけどさ、とそう付け加えた彼女に、もうお腹いっぱいです、と小さく笑って断る。

彼女は家のことを全部知っていた。台所からリビングまで、全部把握している彼女に劣等感を感じられずにはいられない。

この家に住んでいるのはわたしなのに…彼女の方がずっとしっくりくるんだ。


「あれ?そういえば類は?」


類…


それを聞いてわたしはハッとする。


もしかして彼女は…


「あいつは仕事だ。」

「なんだ…残念。」



岬の偽名しかしらない…?


だったら天馬って…


「ねえねえ!天馬とはどうやって知り合ったの?」

「えっ…それは…。」

「だってなかなか出会えないでしょ、こんな人。」


そう言ってクスッと笑う彼女。


「成り行きというか…」


わたしは光に助けを求めるけれど、まさかの知らんぷり。

ソファから足を投げ出してふんぞり返ってる。

やっぱりこいつ性格悪い。


「あー、じゃあやっぱりホテルか。」

「ホテル?」


わたしは困惑して彼女に聞き返す。ホテルって…店員とか?そいういうこと?


「だから、そういうこと。」


そういう…こと…

って…


「拾われたんでしょ?」

「え……。」


どうして…。


「天馬、そうでしょ?」


光を見れば、めんどくさそうな表情をしている。


「花蓮にしたみたいにホテルにでも連れ込んだんじゃないの?」


その瞬間、さっきまで怠そうな表情をしていた光の貧乏ゆすりがピタッと止まった。


心なしか鈴葉さんからは苛立ちが感じられる。まるで…怒っているみたいに。


それに連れ込んだって…そういう行為をしたっていうこと?


光………が?