店長のぶっきらぼうな声が廊下の奥から耳に届く。


路地裏にあるカラオケ店での夜間のバイト志望はなかなかないらしい。


だから仕事に5時間遅れたわたしを店長はクビにしないでくれていた。


売れないカラオケ店に感謝のみだ。


「昨日は本当にすいませんでしたっ。」


もう一度感謝の気持ちと謝罪を込めて深く頭を下げれば、


「んまあ可愛い子がうちで働いてくれてんだから文句は言えねえけどな。」


そう言いながら筋肉質な腕のタトゥーをこする店長はいつだってわたしに甘い。


「うちじゃあガラの悪い連中しかいねえからな。」


タバコを吹かしながら言う店長が一番危なそうなんだけどね。