湯船に体が沈む。


「やだ!!」


思わず光に向かって叫んだ。


「見ないで…っ!!」


光はそれでも、表情を崩さず、片腕でわたしをお風呂から引きずり上げた。


「お前はそうやって逃げるつもりか。」


低い声だった。


「いつまでもいつまでも、現実逃避をするのか。」


「っ、離して!」


「俺はそういう奴が嫌いだ。」


「っ…っじゃあ構わなければいいじゃん!」


いつの日かも放たれた言葉に、わたしは思わず過剰に反応した。好き…好きなのに、大っ嫌い。大嫌い。


「俺がお前を離したら、お前には誰もいねえんだよっ!」


光が声を荒げる。

わたしの髪の毛から滴る水が、朴を伝って落ちる。


「っ、やだあっ、言うな!言うな!」


やだ。

やめて。


お母さんがいるのに。お父さんもいるのに。


やめて。



や・め・て



「いい加減認めろっ!」


光がわたしの胸ぐらを掴んで引き寄せた。

眉間にしわを寄せ、わたしを見下ろす光は青筋を立てていた。


「どうして頼らねえ?バイトするほど金がねえか?じゃあ俺がお前を養っている理由はなんなんだよ?」


「っ………」


「お前みたいな奴には一生仲間なんてできねえ。お前が仲間から遠ざかっているだけだからだ。ただ勝手に悲劇のヒロイン演じてるお前が嫌いだ。一人で苦しめば誰か救ってくれると思うか?かわいそうだって同情すると思うか?誰もわかんねえんだよ。言わなきゃ誰もわかんねえんだよ!」


「っ、そんなの!!!あんたなんかに言われたくない!!!」


煮えくり返るほどの怒りがそのまま喉から解放された。