ただいまお風呂場の脱衣所。

わたくし、高校三年生、男経験ゼロ、初心者の七瀬凛、とーってもピンチなんです!


「脱げ。」


そう冷たく言い放つあいつを目の前に、わたしは思考回路停止中。


ど、どうしてこうなった……


一生懸命記憶のパズルを辿って行けば、コンビニから家へ帰る途中の車の中の会話が脳内でリプレイされた。


ーー−−−


「俺に、話せねえことか。」


光は運転しながら聞いた。


光からわたしに踏み込んできたのは、これが初めてだった。


「……知りたくないと思う…から。」


自分の声が消えていくような気がした。それはきっと光が繕っていた黒いオーラだと思う。わたしの抱えている何かに対して、すごく怒っているみたいだった。


「なあ。」

「…。」

「俺じゃダメなのかよ。」

「え…?」

「知りてえ。」

「っ…。」

「お前を知りてえ。」

「どう…して、」

「理由が必要か。」


いつの日かの光の言葉が蘇った。

人を助けるのに理由は必要か、って、そう言った光は、本当にかっこよかった。


「お前がいつも腹を抑えている理由、無性に泣きてえのに泣けねえお前、知りてえんだよ。」


少しだけイラついていて、どうしてそう思っているのかわからない、とでも言いたげにわたしを見る彼に、心臓が高まった。


−−−ーー


……直接、腹を見に来た…とでも?