あなたは気づいてないけれど、マスクをつけたあの店員、毎朝勇気付けられているんだよ。 恐ろしいほど整った顔の奥に光る瞳がわずかに見開かれた。 多少は怒りを含んでいるけれど、 「親が心配してるから帰ります。」 といってペコっと頭を下げた。 背を向けて歩きかけた時、 「お前泣かねえのな。」 と声をかけられた。 「あんな怖え奴ら前にして、俺なんか見て、泣かねえのな。」 わたしは立ち止まると、小さく深呼吸した。 1、2、3… 「変ですよね。」 満面の笑みで振り返った。