ドンッ



鈍い音が鳴り響いた。



びくっと体を震わせて静かに飛鳥を見た。



飛鳥は拳を握りしめて、地面を殴りつけていた。



なにかと尋ねる前に、低い声が聞こえた。



「呑気でいいよな。自分が一番辛いって顔しといて、だけど結局、友達もいて、好きな奴とも上手くいって、馬鹿話して。ふっざけんなよ…」



そう声を絞り出す飛鳥は見たこともないような恐ろしい顔をしていて、上手く言葉を返せない。



「もう沢山だ。お前の近くにいるのは苦しいんだよ」



そう呟くと、飛鳥はドアの向こうに消えてしまった。



どうして、なぜ、こうなった?



飛鳥を笑わせたくて、



自分の話ばかりして、



飛鳥は何を望んでいた?



そんなの私はわからない。



だって、私は飛鳥のこと何一つ知らなかったから。



だから傷つけた。



どうしようもなく寂しいのに、不思議と涙は出なかった。



だけど、日の当たる屋上で、私の心は冷たく冷え切っていた。