ドアを閉めてから、ある小さな不安が渦巻いてそこから動けなくなった。



どうしよう、



しばらくドアにもたれかかっていると、急に支えるものがなくなって、思わず後ろに倒れかける。



悲鳴をあげる直前に私の体は誰かによって受け止められた。



もちろんそれは屋上にただ1人いた飛鳥で。



「何してんの?」



呆れ顔で、そう問いかけて来た。



慌てて立ち上がって、飛鳥に向き直した。



「あ、これ忘れもん」



飛鳥は私の手の上に鉛筆を転がした。



「あ、ありがとう」



「お前ここで何してたの?」



「いやあ、それはあ…」



「?」



不思議そうに、というか不審物を見るような目で歯切れの悪い私を飛鳥は見つめる。



ここはもう、勇気を出すしかない。



「あのぅ、もう絵は終わっちゃったけどさ、明日からもここに来てもいい?」



ぼそぼそと下を向いて話す。



飛鳥と昼休みを過ごすのはいつのまにか当たり前になっていた。



平田ガールズから嫌がらせをされても、飛鳥の顔を見ると忘れられた。



これからも絵がなくてもそんな日々が続けばいいななんて、思っちゃってたんだ。



しばらく返事は返ってこない。



嫌だよねえ、そりゃあ。



だって、元々モデルだって、必死に頼んで許してもらったんだし、飛鳥って1人が好きそうだし。



仕方ないか。