給湯室に行くと、派遣の坂口さんがコーヒーをいれていた。
 「手伝いますよ。今日は人数が多そうですから。」
「ありがとうございます。」
早速、手を洗おうとすると、「あ!」という声が聞こえた。
声のしたほうを見る。
「外さないんですか?」と聞かれた。
ああ、そうだった。今まで、腕時計をする習慣がなかったから。
「あっ忘れてました。」笑いながら言うと、「彼氏さんからのプレゼントですか?」と、聞かれた。
腕時計を外しながら、「はい。」と答える。
ちょっと恥ずかしくて俯いた。
腕時計は、生活防水らしいけど、大事にしたいから、制服のポケットにしまった。

 良いなぁ~とか言いながら、トレイを持って坂口さんが給湯室を出て行く。
手を洗い、コーヒーとお茶の用意をした。

 思わず、顔がにやける。
クリスマスの朝に慌ただしく渡されたプレゼント、「社会人なんだから腕時計くらい持っとけ。」と言ったのは、彼の照れ隠しに違いない。
 私からのプレゼントはネクタイで、ちょっと格差があって、心苦しい。
彼は、喜んでその場で着けてくれたけど。

 でも、小田さんは、どうして課長からのプレゼントだって分かったんだろ?
藤森さんなんて、当日に「自分で買ったの?」って聞いてきたのに。
まぁ、藤森さんは、私に彼氏が居ないことを知ってたからだと思うけど。