クールアンドドライ

 「思い出したか?」
課長にお酌して立ち上がろうとしたら、そう聞かれた。
「ああ、姉に聞きました。もう、忘れました。」
「何で、忘れんだよ?」
不機嫌そうに、課長が聞いてくる。
そして、手にコップを持たされ、ビールを注がれた。飲めということだろう。
軽く会釈をして、飲んだ。
ふーっと息を吐いて、口を開く。
「時の流れって、とても残酷なんですね。・・・だから、忘れた事にします。」

「なんか、すげー屈辱を感じる。」

「えっ、そうですか?」

「悪かったなぁ、憧れの王子様が、無能上司で。」

 これは、筒抜けではないか。
この間、姉の家での話がもう、伝わっているとは・・・

「ずいぶん、仲が良いんですね。」

「まぁな。一時期一緒に住んでるようなもんだったからな。」

そうか確か、ひろにぃの家の母屋?っていうの?二世帯住宅の母屋の方に住んでたんだ。
まぁ、出戻りってやつだろう。
で、苗字が変わってるってことは、聞いていいんだろうか?

「そういえば・・」

「なんだ?」

「あっ…、と、その、、苗字が・・」
つい、聞いてしまった。

「ああ、再婚したんだ。佐々木医院の先生と。」
「えっ?あの先生お爺ちゃんでしたよね?」
「ああ、違う違う、息子のほうだよ。」