「本当にすごかったのっ!ピアノに触った瞬間知らない人になったみたいで、音とか私が中学のときに遊びで触ったような音じゃないの!」


今日の放課後の感想を頑張って、お母さんに伝えようとしている。


「んー、そうなのね。よくわからないけど。すごいね」


私の説明が悪いのか、お母さんが真剣に聴いてないのか、どちらもだと思うけど、この話しは誰かにしたくて、たまらなかった。


「私も何か才能があればなぁ」

「あら、みきだって一輪車上手じゃない」

「そういうんじゃないもん」


私なんて、クラスでもいてもいなくても変わらないし、才能がないどころか、習い事なんて塾しか行ったことがない。
中学の時は、適当に入ったテニス部を三年間続けたけど、良い実績はない。

よく言えば、真面目。
悪く言えば、何もない。


うらやましいな。うらやましいな。