本郷くんと一城さんは何やら、二人で話始めた。
私はどこで聴けばいいんだろうと思いながらも、ピアノに近づいた。
「じゃ、おねがいします」
「しまーす」
二人に頭を下げられ、私もぺこりと頭を下げた。
「最初、焦らない」
「はい。音色考える」
「はい」
本郷くんの、『はい』の言葉の後にピアノの音がなった。
その音があまりにも大きくて、びっくりする。
すご…。さっき外で聴いていた音とは違う。
音楽やピアノを知らない私も、その音の凄さが伝わってくる。
身体は音楽に乗って揺れる。
これも、練習するのかな。
ピアノの下の足で踏む…のも、本郷くんがやっていたけど、一城さんとも合っている気がした。
「やば、」
小さくもれた、私の声。
キラキラした夕日がカーテンの隙間から漏れて、一城さんたちを照らした。
一城さんは、ちらちらと楽譜を見たり、本郷くんの手元を見たり。
本郷くんは、楽譜を見ているだけ。顔を下げない。
どちらも、口元は笑っているように見えた。
ピアノ好きなんだなぁ。
憧れるなぁ。
私にも誇れる何かあればなぁ。
世界なんてそんなものじゃなくていいの。
学校で一番、クラスで一番、ううん。
ちょっとでも、誇れるもの。
そんなものが私にも欲しいな。
