とある県の、とある山奥に位置する小さな村。
 その村を囲むような森の名前は『誘いの森』。
 誘いの森は、見た感じ、迷いそうなほど木々は生えていない。しかし、この森で何十人もの村人が行方を眩ませている。

 <まるで、何かに誘われたかのように…。>

 これ以上、村人を増やすわけにはいかない。村長は、村人が森に入らないように、高い柵で村を囲んだ。高い柵で囲まれている村、なので、いつしかその村は『籠目村』と呼ばれるようになった。
 村の大人たちは、子供たちに、柵を越えてはいけない、化物が食べてしまうから、と話した。しかし、子供というのは好奇心に負けやすく、柵に穴を開けてまで森に入ってしまうこともあった。そんな子供を追いかけて、迷ってしまった大人も数多くいた。

 これは、森に迷った村人たちに襲い掛かった残忍で凄惨な悲劇の話である。