聞いたことのない、声が近くからした。


窓の方を見ると、たれ目の少年が、机の端でしゃがんでいた。


じ、と私の方を見ている。


「貴方は、誰?」


彼の正体を、分かっていたはずなのに、私はたずねた。


「僕?吉野令だよ。」


それも、そのはず。


この本を読み終えたのは、吉野君しかいないんだから。