「ひぃっ」

驚いて体を引いた私が見たものは......。


「え?チョコパイ?」

菓子だ。
昔ながら万人に親しまれたチョコパイ。

「やるよ。食ってから帰れば」
そう言って、にこやかに微笑む訳でもなくクールな態度で男は、私の手にチョコパイを押し付けた。

チョコパイ、大好きなんだけど。

さっさとホームを歩いていく男。

なんだ、やっぱり優しいんじゃん。

「ありがとう~」
男の背中にお礼を言って一礼した。

クールな態度の男の背中に後光がさしてみえたのは、決して気のせいじゃなかったと思う。

私はベンチに座り、早速チョコパイの袋を開けた。