「あ、そっか」

確かにせっかく恥ずかしいお腹の音の身代わりになってもらったというのに、私だけが元いた電車に乗ったままだったら?

またお腹の音が響き、やっぱり音の主は、こいつなんじゃん。と周りの人にバレてしまう。


ようやく状況を理解出来た私は
「すみません。色々考えてもらったのに失礼な態度をとったりして」
と頭を下げた。

電車のドアが閉まった音がした。

すると、男は
「あんたさ」と言って私の顔を覗きこむようにしてきた。

顔の距離が非常に近くなり、なんだかドキドキしてしまう。

電車がゆっくり走り幅跳び始めたとき、男は私の耳元に顔を近づけて

「クソダサいな」
と一言言い捨て私から離れた。