「なっ!」

腕を掴まれ強引に電車から降ろされた私は、掴まれた腕を引き男の手を振り払う。
「ちょっと、こんな駅で降りる予定じゃ無いんですけど」

ホームに降り立ってみると、目の前の男はモデルみたいに背が高かった。

少し見上げるようにして

「そりゃあ、ありがたいですよ?見ず知らずの私を恥ずかしさから救ってくれて......それは感謝してます。ありがとうございました。これでいいでしょう?」
と男を睨んで電車にまた乗り込もうとした。


すると、また腕を掴まれてしまう。

ぎょっとして振り返り
「いい加減にしてよ。お礼なら言ったじゃない」
キレぎみに文句を浴びせた。

お腹が減りすぎてイライラしていたから、私の言葉は必要以上にトゲトゲしかったように思う。

発車のベルが鳴り始めたとき
「俺が降りたら、デカイ腹の音を俺のだってした意味がないんたけど」
呆れたように男が言った。