「走ってきたの?偉い偉い」
言いながら遼也先輩が私の頭をなでてくれた。
やだっ頭なでなでじゃん!
やばい緊張してきた。
カチンコチンになってしまった私は、遼也先輩の顔がまともに見られなくなっていた。
きっと顔も真っ赤だ。
顔が熱い!
もう、どうしよう!
緊張しまくりの私は遼也先輩にいきなり左手首を握られ、びっくりして顔を上げた。
遼也先輩は、私に
「せっかく走って来たんだろ?学校まで走ろっか」
と微笑んだ。
「は、はい!」
嘘みたいだ。
私に今翼が生えていないのが不思議なくらい。
遼也先輩に手を握られている。
遼也先輩と一緒に走ってる。
夢みたいな時間。
なんかアオハルっぽい。
もう、学校の門が見えて来た。
なんてことだろう。
なんでこんなに学校って近いんだろ。
学校がすごく遠かったら、私は遼也先輩ともっと長く手を繋いでいられたのに。
空気が読めない学校の存在に私は、うんざりしていた。
校門に入ると走るのをやめて先輩と私は立ち止まり肩を上下させた。
「ついちゃったね」
息を少しだけ弾ませて先輩は言った。
ついちゃった?
なんか、その言い方って……凄く意味深。
先輩は、私に微笑むとそっと手を離した。
「じゃ、俺あっちだから」
先輩は、校舎の右側を指差した。
各学年で、靴箱がある場所が違うのだ。
「ふあ、はい」
頭を下げ私は左方向へ向かった。
途中、先輩の方を見ると先輩もこちらを見ていた。
あ、見てる!
ニッコリ笑って先輩は手を振ってくれた。
慌てて振り返して私はそそくさと校舎へ入った。入ってはみたが今更胸がドキドキして収まりがつかない。
私、今日先輩と初めて手をつないじゃった!
やだ、どうしょう!
顔が自然とニヤけてしょうがない。頬をペチペチ叩きながら私は、ローファーを上履きに履き替えた。