振り返った元の顔は、やけに引きつっている。

私は「なに驚いてんの?」と言いながら、止まっている元を追い抜いた。

「お前っ、何言ってやがる」

「だから、ひかる先輩を好きな元にも少しはチャンスあるねって言ってんの」

「ばっ!何で俺が!」

「違うの?まさかね」

「お、俺がっいつそんなこと言ったんだよ」
元は唾を飛ばしながら私の横に並んで階段を上がる、

「さっき、真っ赤な顔してたじゃん」

「真っ赤?いつだよ」

「ひかる先輩に笑いかけられて、とろけそうに真っ赤になってたじゃん」

「なってねーよ。お前の気のせいだろが」

「そーお、なんで隠すかなぁ。男らしく認めればいいのに」

「別に隠してねーし。ばか」
のしのしと肩をいからせ階段を上がる元。

認めたくないんだ。

この小心者。そんなんだから彼女が出来ないのよ。

まあ、私も似たようなもんだから。元のことはとやかく言えない。