チョコパイを食べ終えてから次にやってきた電車に乗るために列に並んだ。

ホームに到着した電車に乗り込んですぐに
「あれ?明日美ちゃんじゃね?」
という声が聞こえてきて辺りを見渡した。

「あっ」

つり革を掴んで立っていたのは、わたしの大好きな、原田 遼也(はらだ りょうや)先輩だった。

「ホントだ。何、あいつこんなとっから乗ってくんの?」
遼也先輩の隣で、うざそうな表情をみせているのは私の兄、鳴沢 元(なるさわ はじめ)だ。

「誰?知ってる子?」
兄の隣にいた美人が私の方へ顔を向けた。彼女は、高橋ひかるさん。うちの学校では、かなりの有名人だ。サッカー部のマネージャーで頭も良く、おまけにすごい美人ときている。

うちの兄の鼻の下の伸び具合ときたら、現在劇的に最悪な状態だ。思わず目を背けたくなる。

「元の妹たよ。明日美ちゃん、良かったら、こっちにおいでよ」
いつも優しくてイケメンな遼也先輩が、ぼっちの私を手招きしてくれた。

なんて、優しくてイケメンなんだろう。

遼也先輩の優しさに触れ、私は感動していた。

それなのに、うちのバカ兄貴が
「いーよ、呼ばなくても」と、すごく意地悪なことを言っている。

「そんなこと言わないの、元くん。妹さんでしょ?」
ひかる先輩に言われて、うちの兄貴は
「高橋さんがいいなら......来いよ!ぐずぐずすんな、明日美」と恥ずかしいくらいの大きな声で私を呼んだ。

まったく、声のボリュームが頭と同じくらいにおかしな男だ。ホントにこの人と兄妹でいることが心底恥ずかしい。

私は、周りの人の視線を気にしながら先輩たちのところへ小さくなって向かった。