にしても......お腹減ったなぁ。


学校帰りの電車。
車内は、まあまあ混んでいる。

ああ、お腹なりそう。
今鳴ったら、きっと隣の人に聞こえちゃうだろうな。

一番端の椅子に座っていた私は、ちらりと隣に座る人へ視線を向けた。

げっ!

思わず引くほど驚いていた。


すごっ、隣の人、かなりのイケメンくんなんですけど。

しかも、この紺のブレザーは、名門私立の『橘北(たちばなきた)校』じゃないの?

ヤバい。

かなり、焦ってきた。


よし、ここはひとまず予想してみよう。


盛大にお腹がなる。

イケメンが気づく。

笑われる。


ああ、だめだ。
ネガティブな予想しか浮かんで来ない。

もう少しポジティブに。

お腹がなる。盛大に鳴る。

イケメンが気づく。

私の腹の音ではないフリをする。 

イケメンは、そのうち

『気のせいか』と思い

忘れる。

そうだ、これなら大丈夫そうだ。
でも、出来れば鳴らないに越したことはない。


イケメンにお腹の音を聞かせても、きっと私には恥ずかしさしか残らないだろう。


お腹に手を当て、降りるまで絶対に鳴らないで欲しいと願っていた。