「あの、社長?そんな事より、この前のお部屋の事なんですけど…」

「ん?なんだっけ」

「ですから、スイートルーム…申し訳ないですので、お金はお返しします」

「いいよ。付き合ってくれた御礼だから」


帽子から手が離れ思ったより深く被せられていたため、ツバを持って持ち上げる。

「でも、そう言うわけには…」

「いいからさ。それより、その腕の傷…」

「え?」

ツバを持ち上げた時に服の隙間から見えたのだろう。社長の視線が腕に注がれ素早く背中に手を回す。


「これは、その」

(なんて目ざといんだろう。社長はなんでこんなに細かい事に気付くの?)


「あの、ごめんなさい。私、仕事に戻りますね!」


これ以上、一緒にいれはボロが出てしまう。

台車に手を置き、その場から立ち去る。だけど社長は手を伸ばし私の手首を掴んだ。