玄関に投げ捨てた鞄の中からスマホを取り出す。ロックを解除してメールを開くとその主の名前にドクンと胸が高鳴る。
(凛太朗さんから…だ)
朝方から、ずっと待ち望んでいたメールがやっと届いたと言うのに、直ぐに開く事は出来なかった。
信じているのに、少し怖い。でも、見ないと…
震える手でメールを見る。たった、二言のメール。『あの店で、待ってる』そう書かれたメール。
「…あっ」
あの店。なんの手掛かりも時間も書かれていないのに、凛太朗さんが待っている場所がなんとなく分かった。
靴を履き直し、スマホだけを持って無我夢中でマンションを飛び出した。


