「あのピアス、華子さんのものでない事は分かっていました」
「やっぱり…なんか、あやしいと思いました」
「すみません。車に乗せた女性には必ずしています。やましい理由で社長に近寄って来る女性かどうか調べるために。華子さんだけですよ、違いますと言って来た方は」
「じ、自分のものではないので、普通かと…」
「普通ではありません。お金や地位や名誉が欲しい女性もいますから」
「そう、ですか」
「よって、私のテストをクリアした華子さんを、私は応援しています。何があったのか聞きませんが…いい方向に行く事を願っています」
「ありがとうございます…」
「では、休憩中にすみません。そろそろ失礼します」
お辞儀をして、針谷さんは去って行く。
なんか、針谷さんにも背中を押してもらったかも。私は、周りに応援して心配させてばかりだな。
頑張ろう。帰って、凛太朗さんを待っていよう。
心にそう決意すると、休憩時間が残り10分だと気付き、急いで更衣室に戻った。


