「結婚を受け入れてくれて嬉しかった。例え、弱った華子に迫って、勢いの結婚でもね。婚姻届を書いた日、俺は決めたんだ。この子を守らないとって。お互い知らない事が多くても、これから知りたいと。どんな事でも受け入れて、家族になるって決めていた」
「…凛太朗さん…」
「信じていた。だから、頼って欲しかった。俺を信じて欲しかった。でも、それは…俺の一方的な思いだったんだね」
「ち、違います…それは」
「なら、なんで話してくれなかったの?過去の事、怪我の事。なんで、俺から…逃げたの?」
「だ、だって…それを話したら…幻滅されるかもって思ったら…怖くて…迷って」
「それは、俺を信じてないってことでしょ」
「ち、違う…違う!」
「覚悟って、俺を信じる覚悟が華子にはなかったんだ。俺と家族としての愛を築く覚悟が華子にはなかった。支えるなんて…覚悟ではないよ」
ポロリと涙が溢れる。頬を伝い、ポタポタと衣服を濡らす。
「迷わないで、迷惑とか幻滅とか考えないで話してよ。そんな過去の話でそんな事は思わない。なんでも受け入れるよ。俺達は結婚して、夫婦になったんだから」
凛太朗さんはそう言うと私の手を離す。
「ごめん。その涙は拭いてあげられない。今日は帰らないから」
頭を数回なで、凛太朗さんはまた人混みに消えていく。1人残され、私は自分の浅はかな考えに酷く自己嫌悪に襲われた。


