問いかけに、私は一呼吸置いてから首を左右にふる。

「スーパーまでは行きました。でも…出来なかった」


そう、私は聡くんの言う通りには出来なかった。1時間、スーパーで悩み…出来なくて、聡くんの家に帰った。


謝ったけど許してくれない。荒れ狂ったように怒鳴られてテーブルに置かれたマグカップを投げつけられて壁にぶつかり割れてしまった。

粉々になったマグカップ。ゾッと背筋が凍りつき、逃げるように部屋を出た。


聡くんともう一緒にいられない。もう、無理。


そう思い、アパートの渡り廊下を走り階段を降りようとした時、追いかけて来た聡くんに腕を掴まれた。


「離してって…揉み合っていたら…階段から足を踏み外して…転がり落ちました」


そう、この前…聡くんとショッピングモールであった時と同じように。

「当たりどころが悪くて、瞼を切ってしまいました。結構…がっつりと。血も沢山出て…大騒ぎになりました」


聡くんは血だらけの私を見て顔を青ざめた。階段をおりて、目の前で俺は悪くないと言い張る彼に「悪いのは私だよ」と…言ってしまった。


病院でも、原因を聞かれ咄嗟に足を踏み外した。聡くんは音を聞きつけて駆けつけてくれたと…嘘をついた。向かえに来てくれた親にも。


「それをきっかけに…聡くんとは自然消滅しました。連絡も来ないし、私からする事もない。暫くして、就職するために遠い土地に行くことを人を通して聞いて…安心しました。もう、2度と会うことはないと思っていたのに…こんな事になるなんて…」


別れた当時、毎日のようにうなされた。男性が怖くて同じ空間にいる事も、距離が近い事も気持ち悪いと思うほどのトラウマに。