「うん、美味しい。この値段でこの美味しさは凄いと思う。あのさ、このお店は買収出来ると思う?」

「……え?」


聞き捨てならないセリフに頭の中がフリーズした。


「だってほら、買収すればいつでも食べられるから。1人でここまでは流石に来れない」


「ま、待ってください。ば、買収なんてしなくていいですよ!た、食べたい時は言ってくれれば付き合いますから」


(この人はなにを言っているんだろう…ハンバーガー店を買収しようだなんて、あり得ない)


「そう。それなら買収はやめようかな。なんて、針谷にも怒られそうだし」

「針谷さんって…社長の秘書さんですよね?」


社長の隣にはいつも針谷さんと言う男性秘書がいる。私に話しかけてくる時、いつも一緒にいる人が針谷さんだ。


「うん。なに、針谷が好きなの?」

「ち、違います。ただ、よく食堂で他のスタッフさんが話しているのを聞きます」


社長とは正反対で少し冷たい顔付きがたまらないとか、かっこいいと皆んなが話しているのを聞いた事が何度もある。