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「お先に失礼します。お疲れ様でした」


夕方、その日の業務をすべて終わらせタイムカードを押す。井戸端会議をしているおば様達に声を掛け更衣室を出て、従業員入り口の扉を開けると小雨が降っている。

朝方から空が灰色に染まっていて天気予想では夕方から雨がふると言っていた。鞄から折りたたみ傘を取り出して会社を出る。


従業入り口を出るとすぐに階段を降りて、ホテルの裏側にあるスタッフ専用の青空駐車スペースを通り帰るのがルール。


裏門を通りホテルを出てから住んでいる寮とは反対側に向かって歩く。今日の夕ご飯を買うために。


寮は寮費や光熱費を含めた10000円だけれど、ご飯は出ない。その為、部屋にある小さなキッチンで皆んな自炊をしている。


「今日はなにを食べようかな?」


ポケットからスマホを取り出し、ネットで「今日の夕飯のオススメ」を検索する。


友人と飲みに行く時以外は節約の為に下手だけれど、レシピを見ながら何とか作っている。


掃除は得意だけど、料理は苦手。母親に料理を習っておけばと後悔した。