王子様とハナコさんと鼓星



「そう言えばさ、猫に引っかかれた傷はもう治ったの?」

本を閉じ、テーブルに置くと凛太朗さんは脚を組む。


「あ、は、はい。おかげさまで」

腕をまくって見せると、その傷を見てから微笑む。

「本当だ。良かったよ」

「そう言えば、凛太朗さんも引っかかれたとか言っていましたけど…」


「猫のこと?マンションに…って、そうか。見せなかったね。次、部屋に来た時に紹介するよ」

「動物は好きなので楽しみです」

「俺も好きだよ。一緒だね」

「は、はい」


(そうだ。元彼の事…いま、話そうかな。こういう落ち着いた時の方が、話を聞いてくれるだろうから)

「あの、凛太朗さん?」

「ん?」

「その、突然なんですけど…お願いがあって」

なに?そう首を少し傾げながら問われ、私はゴクリと息を飲む。


「会って欲しい人が…いるんです」

「あぁ、いいけど…友達とか?」

「いえ、それが…前に付き合っていた人で…」


語尾を逃しながら言う。すると、凛太朗さんは口を閉ざしてしまった。

や、やっぱり、だめだよね。

どんな顔をしているのか、怒っているのか、呆れているのか。その表情を伺うのが怖く顔を伏せる。

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