ノックをしようか、しないで入ってもいいのか。少し迷った末、思い切り息を吸い吐き出す。自分に気合を入れてノックをしてからドアを開ける。
「し、失礼します」
「あ、おかえり」
部屋に入ると凛太朗さんは変わらずソファーに座っていた。手には本があり何かを読んでいたようだ。
変な緊張をしながら荷物を置くと、お風呂に向かった時とは凛太朗さんの服装が違う事に気付く。毛先も僅かに濡れている。
「あれ、凛太朗さんもお風呂に?」
「うん。この家、お風呂は2つあるからさ」
「そ、そうですか。お風呂、ありがとうございました」
(あ、あれ。なんか、さっきの事がなかったかのように普通。意識していたのは、私だけだったのかも。それならそれでいいんだけど)
「どうしたの?立ってないで座ったら?」
「は、はい」
隣に今度こそ距離を置いて座ると、ふわっと凛太朗さんからいい香りがする。シャンプーの匂いかな。いつもの香水より自然で好きかも。
「眠い?まだ、23時だけど」
「いえ。凛太朗さんは大丈夫ですか?」
「全然平気だよ。いつも24時過ぎてから寝る事が多いから。あ、なにか飲む?さっきのハーブティーは冷めたから片付けてもらったからさ」
「大丈夫です、お気遣いなく」
時計は凛太朗さんの言うとおり23時を少しだけ過ぎている。
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