「それでも言って欲しかったわ。ところで。華子さんは清掃部なのね。お若いのに清掃部なんて大変でしょ?」


「そう、ですね。大変な事もありますけど、掃除は得意ですので頑張っています」


「なら、掃除が苦手な凛太朗とは相性がいいわね。針谷も寧々さんもその事に頭を悩ませていたから」


思わず苦笑いを浮かべた。針谷さんも言っていたっけ。社長は綺麗好きな割には掃除が苦手だって。


「華子さんはお仕事はいつまで続けるおつもりで?」


「はい。いきなり辞めると皆んなに迷惑がかかりますから、きりよく3月までと考えています」

「そうか。それなら、辞めてからは凛太朗を頼むよ。いずれば桐生グループのトップに立つ。我々の下には何千人もの従業員がいるんだ。彼等を守るためにも、このグループは次の世代へと繋がなければいけない。苦労することはあるかもしれないが、信じて支えてくれると嬉しいよ」


会長の曇りのない瞳が私を真っ直ぐに捉える。威圧的でも高圧的でもない。その瞳からは社長を思う親心が垣間見えた。

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