掃除は嫌いではないけれど、正直に言うとこのトイレ掃除は本当に大変。少しでも手を止めたり、予想外にトイレが汚れていたりすると時間のロス。
チェックインが始まるまでに終わらない。客数が少ない時はスムーズに行くけれど、そんな日は今まで数えるほどもなかった。
「あのさ、あまりにも辛いようなら私がシェフに相談してシェフから支配人に言ってもらおうか?客室の掃除をトイレの方に1人回して欲しいって。あと、あの帝国民は清掃にあがって部屋に残ったお部屋出しの菓子を食べてるってリークしちゃえばいいのよ」
「さ、桜。それ、ダメだよ!」
唇に人差し指を当て、周りを見渡す。誰もいない事にホッと胸を撫で下ろした。
客室清掃には入り数により人数が変わるけれど、だいたい毎日の数としては30人前後のハウスキーパーがいる。
施設管理部の清掃部とは言っても、細かく分かれていてトイレと客室清掃は同じ。
あとは、屋外。ロビーにエントランス、通路などの、共有箇所。レストラン、カフェ、トレーニング施設は部署に配属しているスタッフが朝に行う決まり。
なので、ただ部屋を回る事と、バックヤードの清掃だけ。いくら念入りに掃除をするからといいそんなに人数がいるのか謎だった。
ある日、私がトイレ掃除で分からない事があり、客室に向かった際のこと。
おばさま達が、部屋出しとして使っている高級な羊羹を貪っていたのだ。


