「…熱いから気をつけて」
「…はい、ありがとう、いただきます」

「…美味しい…お菓子だけじゃなくて、料理も得意なんですね。彼女さんが羨ましい」

そう言ってフッと笑うと、再び食べ始める。

「…一人暮らしが長いからはこれくらい何てことないよ。他人に料理を作ったのはこれが初めてだよ。彼女なんて、もう何年もいないよ。強いて言うなら、仕事が恋人かな」

そう言って笑う楓。

こんなにイケメンで優しい人に、彼女の一人もいないなんて、驚きしかない。

「…楓さん、素敵な人なのに」
「…そ?…じゃあ、美々が俺の彼女になる?」

その言葉に驚いて、危うくれんげを落としそうになる。

「…冗談やめてくださいよ」
「…うん、ごめん。でも」

「…あ、美味しかったです。ご馳走さまでした」
「…え、あ、うん。薬も飲もうか」

薬を手渡され、次に水の入ったコップをくれた。

「…なぁ、美々」
「…何ですか?」

「…北条社長と、知り合いだったんだな」
「…え、ぁ、はい」

「…付き合ってるの?」
「…どどうしてですか?」

恋人だと言ってもいいものか、悩んでしまう。ルイと私は、身分違いもいいところだ。

「…美々が会場で倒れたとき、それを助けたのは北条社長で、その時、北条社長が言ったんだ。美々は大事な人だって」