「…そう、わかった。美々の気持ちはよーく」
「…ルカさん」

ごねられるかと思っていたけど、意外とあっさり納得してくれた事に、少し拍子抜けしていると。

「…ルイ、お前はいいのか?美々はもっと凄いパティシエになると、わかってて、こんなチャンスを簡単に逃すことが、美々の本当の幸せなのか?」

「…」

ルカの言葉に、ルイは直ぐに反論できなかった。

実際、もっと広い世界を見せれば、美々が成長することはわかりきっている。

日本でも、十分に成長していけるが、本場に出るのは、美々の為になる。

困惑顔のルイが目に入った私は、ルイの前に立ちはだかった。

ルカは驚いた顔で私を見る。

「…これは私の人生です。決めるのは、ルイさんじゃない。この私です」

キッパリ言い張った。

…すると、ルカは、大きな溜め息をついた。

「…今夜は帰るよ。でも、まだ美々を諦めた訳じゃないから」

そう言うと、車に乗り込み、ルカは帰っていった。

…その場に残った私とルイ。

ルイは私の手を強く握りしめている。

私は振り返って、ルイを見上げた。

何とも言えない顔のルイ。

私は困ったような笑みを浮かべて…

ルイの手を引っ張ると、ルイは前屈みになった。

その拍子に、私はルイの頬にそっとキスをした。