「綾瀬さん!」
止まることのない涙を抑えるのは大変だった。
その間に、桃の部屋からは騒がしい声が聞こえてくる。
桃…?大丈夫なの…?
「芽衣!」
それと同時に、前からは焦った表情で走ってくる龍也と春翔。
…そして、彼も。
「…奏多、」
桃が目を覚ましたと、病院から連絡を受けたんだろう。
完全に取り乱している奏多は、いつもの奏多じゃない。
「立花!桃は?!」
座り込む私の前に、奏多が走って来る。
会いたいと言わんばかりの表情で、焦った顔なんて彼には似合わない。
「大丈夫ですよ。ゆっくり呼吸してみましょうね。」
病室からまた聞こえてくる騒がしい音や声。
奏多はそれを聞いて、桃の病室の扉を開けた。
「桃!」
心配そうに、荒い声で桃を呼ぶ奏多の声。
その気持ちは、桃に届いていますか。
桃には、奏多が見えていますか。

