ああ、何でこうなってしまったんだろう。
桃は悪くない。
何にも悪くない。
なのになんで…。
「どうされましたか?」
桃の病室の扉の横で崩れ落ちている私を見て、声をかけてくれた看護師さん。
あ、桃の担当の…。
「桃が…、目、覚ましました…。」
「え?」
「でも、でも…、」
「わかりました。落ち着いて下さい。」
そう言って胸ポケットに入っている携帯でどこかへ連絡する看護師さん。
電話を切ると、私の背中をさすりながら落ち着くのを待ってくれている。
「綾瀬さんが目を覚ましたって!」
「通ります!あけて下さい!」
すると前から小走りでくるのは、桃の担当医と数人の看護師さん。
扉をガラガラっと開けて、中へ入っていった。
「桃の記憶が…、」
「…うん。ゆっくりでいいからね。」
「私の聞き間違いじゃなかったら…、彼氏のこと、忘れてるっ…、」
言葉にするのも辛い。
どんどん溢れてくる涙は、もう止まることを知らない。

