少しの間、桃を抱きしめたまま泣いた私。


それを笑って見る桃。


なんだか、いつもと立場が逆転していた。




「私、先生とおばあちゃん呼んでくるね。」


「ごめんね。ありがとう。」




しばらくして泣き止んだ私は、桃から離れて立ち上がった。



あ、そうだ。


奏多にも会いたいだろうし、奏多たちも桃に会いたいだろうな。




「いいの!あと奏多たちも呼んでくる!」


「え?」




だけど、さっきまで笑っていた桃が急に笑顔をなくした。


なにかを必死に考えるように、顔を悩ませている。



私、なんか変なこと言った?




「ん?どうしたの?」




そんな桃に笑って問いかけてみる。


だけど、返ってきた言葉はあまりに残酷で、私の頭を真っ白にした。




「…誰?」


「え?」


「奏多って、誰?」