「桃はあんたを守るためにこうなったんだ。後悔なんてしない。」
頭を下げ続ける奏多の肩を掴んで、おばあちゃんは優しくそう言った。
それから何分かして、ICUから出てきた白衣を着た人。
おばあちゃんに話している会話を、私たちも隣で聞いた。
とりあえず、なんとか一命はとりとめた。
だけど自分で呼吸する力がなく、人工呼吸器に繋がれているらしい。
頭を強く打っているから、目覚めるかどうかは本人の意思次第。
生死を彷徨っていて、いつ何が起きてもおかしくない状況だと思わなければいけない。
それを告げられた日からの毎日は、まるで抜け殻のようだった。
喜連の倉庫に行ってもみんな同じ。
奏多も、龍也も春翔も放心状態。
この倉庫には、笑い声がなくなった。
桃が運ばれてから、私は毎日病院へ通った。
1週間しても起きない桃。
いつまで寝るの…。
1週間と少しして、容態が安定してきた桃はICUから一般病棟へ移された。

