「…桃は?」
春翔は何も言わず、目線だけを私から1つの病室に移した。
「…え、」
春翔の目線を追うと、見えたのは【ICU・集中治療室】とかかれたプレートの部屋。
ガラス張りに見える桃は、いつもと変わらない綺麗な顔で目を閉じていた。
だけど、綺麗な顔とは反対に腕や首に繋がれているのはたくさんの管。
頭には包帯が巻かれていて、顔には酸素マスクがついていた。
「いつ起きるかわからないそうです。」
「う、そ…、でしょ?」
春翔の言葉を聞いて、またシンとする廊下。
聞こえるのは、ガラス張りに聞こえる桃を繋いだ機械の音。
「奏多、芽衣ちゃん。」
何にも考えられなくて桃を見ながらぼーっとしていた時、誰かが私を呼んだ。
「おばあちゃん…、」
「こんな時間なのにごめんね。来てくれてありがとう。」

