疲れているのを忘れて奏多の上に乗る私は、子供のようにわがままを言う。
もうわかってる。
こうすれば奏多は笑って見過ごしてくれることを。
「わかった」って子供をあやすみたいに頭を撫でてくれることも。
「ねえ、いいでしょ?」
わがままを言う私を押し返して、ソファに座り直した奏多にそう言って駄々をこねる。
するとジッと私の目を見る奏多。
もしかしてバレた?
ダメとか言わないよね?
「ねーえー、」
「わかった。」
「え、ほんと?」
「うん。」
「やったあ!」
粘って勝ったのは私。
床に膝をついていた足を持ち上げて、ぴょんぴょん飛び跳ねる。
会うこと自体が久しぶりだったから、更に嬉しく感じた。
「桃、」
「ん?」
ご機嫌の私は、後ろにいる奏多へ振り返る。
私を呼ぶ優しい声。
私の大好きな声。

