「何で呼ばねーの。」
わかりやすくビクッと体は反応したけど、顔を上げることはない。
俺はそんな綾瀬の隣に座り、はぁーっと息をついた。
「番号渡したろ。」
俺が話しかけても何の反応もない。
何が原因なんだよ。
「言いたいことあんなら言えよ。聞いてやるから。」
ウンともスンとも反応しない綾瀬に、気づけば俺はそんなことを言っていた。
あー…らしくねー…。
俺が女にこんなこと言うなんて。
「俺が味方でいてやるからさ。」
何にも反応しなかったあいつは、俺のその言葉を聞くとゆっくりと顔を上げた。
上げた顔を見ると、予想通り目に涙を溜めている。
「…そんなこと、軽々しく言わないでよ。」
弱々しくそう言うあいつの目に、光はない。
いつもニコニコしている表情の想像もつかない。
「みんな離れて行っちゃうくせに…。」
大きな涙の粒が、あいつの頬をポツリとつたう。

